約40年前、衛星電話と**セルラー(携帯通信)**はライバル関係にありました。
当時、ビジネスパーソンや一般消費者が「いつでも、どこでも通信できる」ことを求め始めた市場を巡って、両者は熾烈な競争を繰り広げていました。
例えば、**イリジウム(Iridium)**は、モトローラ技術者の妻がバハマで携帯電話が使えなかったことをきっかけに開発が始まったプロジェクトです。
しかし、その後15年で状況は一変。セルラー通信網の普及スピードが想定を超えたことにより、衛星通信は苦戦を強いられました。
「最終的に、セルラーは圧倒的な速さで欧州をカバーし、さらに中国やブラジルなどの発展途上国にも広がった。」
— Tuck School of Business 論文より
競争から共存へ:衛星とセルラーの関係はシナジーに
今日では
- 通信事業者
- ベンダー
- 標準化団体
- 投資家
すべてが、衛星とセルラーの融合による新たな可能性に注目しています。
特に、デジタルデバイドの解消や新たな消費者・ビジネス向けアプリケーション創出において、両者が連携することで得られるメリットは非常に大きいのです。
カバレッジギャップの解消
- 米国:モバイル通信は人口の99.6%をカバー
- しかし、地理的カバレッジはわずか84%
- カナダでは、人口カバー率99.9%でも、陸地面積カバー率はわずか30%
NTN(Non-Terrestrial Network:非地上ネットワーク)の活用
- 地上基地局設置が非効率な地域(例:山岳地帯、農村、油田)をカバー
- 海洋・海域など、地球表面の約70%にわたるインフラ未整備エリアも網羅可能
これにより、例えば:
- 高額貨物コンテナのトラック・船舶・鉄道間トラッキング
- 世界規模のIoT資産管理
といった新たなユースケースが実現可能となります。
標準化とパートナーシップで加速する市場拡大
こうした流れを受け、GSMAは**「NTNモバイル市場は2030年までに280億ドル規模に成長」**と予測しています。
実際、主要通信事業者は次々とNTNプロバイダーと提携中:
- T-Mobile × Starlink提携
- その他多数の戦略提携が進行中
技術面でも、
- 3GPP Release 17でNTN規格が標準化
- 3GPP Release 19では、セルラープロトコルを衛星通信に適用しやすくする作業項目が追加
これにより、
- デバイスコスト低減
- 接続対象デバイスの拡大
が期待されています。
アンテナ選定と統合が成功のカギ
衛星とセルラーのシームレスな連携を実現する上で、アンテナは極めて重要な役割を担います。
ワイドバンドアンテナの重要性
- 衛星とセルラーの周波数帯が近いため、1本のアンテナで両方カバー可能
- 実際、モジュールも1つのRFコネクタで両方をサポートする設計が主流
セルラーネットワーク認証対応
- 各通信事業者の**TRP(全放射電力)やTIS(全等方感度)**要件をクリアする必要あり
衛星側要求対応
- アクシャルレシオ(偏波性能)、ゲイン、効率など、衛星運用者側の性能要件も満たす必要
統合設計の最適化
- ケース材料・サイズによる性能劣化を防ぐため、デバイス設計段階からのアンテナ統合最適化が不可欠
まとめ:セルラーと衛星、両方の強みを融合する時代へ
ポイント | |
市場機会 | NTNモバイル市場は2030年までに280億ドル規模へ |
技術基盤 | 3GPP Release 17/19により標準化加速 |
成功要件 | ワイドバンド対応アンテナ+最適な統合設計 |
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