建設分野では、わずか数ミリメートルの差がプロジェクトの予算、スケジュール、安全性などに直接影響を与えます。また、高速で走行する自動運転車においては、数センチメートルの精度が事故回避に直結します。
しかし、このような精度は、GPS、Galileo、GLONASS、BeiDouなどのGNSS単体では実現が難しく、その精度は通常約1.5〜10メートルに制限されています。デシメートル、センチメートル、さらにはミリメートルレベルの精度を実現するには、追加の位置情報を提供する補正サービスと組み合わせる必要があります。
補正サービスが必要な理由は、GNSSの可用性と精度を低下させるさまざまな要因が存在するためです。まず、GNSS衛星は約19,000km〜36,000kmの高度を周回しており、地上に到達する頃には信号が非常に弱くなっています。そのため、大気による干渉を受けやすくなります。
GNSS位置精度(単一周波数 vs デュアル周波数)
| 項目 | 説明 | 代表的誤差 |
| 衛星時計誤差 | 位置は衛星の時計に依存し、誤差が発生する | 0.4~1 m |
| 衛星位置誤差 | 衛星自身が送信する位置情報(エフェメリス)の誤差 | 0.3~1 m |
| 電離層遅延 | 太陽によって電離した大気層が信号に影響 | 1~3 m |
| 対流圏遅延 | 雨や霧などの水分による遅延 | 0.2 m |
| 受信機・アンテナバイアス | ハードウェア起因の誤差 | 0.2 m |
| マルチパス | 反射・散乱による信号歪み | 0.2 m |
| 合計 | 単一周波数 | 約2.3~5.6 m |
| 合計 | デュアル周波数 | 約1.5~2.8 m |
補正サービスの分類
補正サービスは主に以下の3つに分類されます:
- サブスクリプション型サービス
RTK(リアルタイムキネマティック)、PPP(Precise Point Positioning)、Lバンドなど
→ コスト重視の用途では課題となる場合あり - インターネット経由型サービス
RTKなどはインターネット接続が必要
→ セルラーモジュールと通信費が追加で必要
→ 圏外では利用不可 - 衛星配信型サービス
Lバンドなどが該当
→ GNSSと同様に減衰やジャミングの影響を受ける
Lバンド補正(PPP)は約20cmの精度を実現します。
さらに高精度(約1cm)が必要な場合は、地上基準局を使用する補正サービスが必要です。代表例がRTKで、PPPと組み合わせたハイブリッド構成も可能です。
Galileoの新しい高精度サービス(HAS)
補正サービスの需要が高まる中、新たな選択肢として登場したのが**Galileo High Accuracy Service(HAS)**です。
HASはPPPベースの補正サービスで、リアルタイムの軌道、時計、バイアスデータを提供し、デシメートルレベルの精度を実現します。
HAS(フェーズ1:2023年開始)の主な特徴:
- 無料で利用可能
- グローバル対応
- 水平方向精度:20cm未満
- 垂直方向精度:40cm未満
- 軌道・時計・バイアス補正に対応
- 複数コンステレーション・周波数対応
(Galileo E1/E5a/E5b/E6 + GPS L1/L2C)
データ配信方式
HASは補正データを衛星経由で配信します
(Galileo E6-B信号:1278.75 MHz)
これは、通常インターネット経由でデータを取得するRTKとは大きく異なります。
その結果:
- 地上ネットワークに依存しない
- セルラーモジュール不要
- デバイスコスト削減
- シンプルな設計(GNSS受信機+アンテナのみ)
→ 高精度かつ低コストが求められる用途に最適
今後の展開
フェーズ1では一部制限付きのサービス(Service Level 1)が提供されています。
今後のフェーズ2では:
- フル機能化
- カバレッジ拡大
- 性能向上
- 追加機能
が予定されています。