**GNSS(全球測位衛星システム)**は、航空、ナビゲーション、取引のタイムスタンプ管理など、民間・政府・ビジネス分野における数千ものアプリケーションに不可欠な存在です。
そのため、GNSSはハッカー、敵対国家、産業スパイなどの攻撃対象となりやすく、**ジャミング(妨害)やスプーフィング(偽装)**による悪意ある攻撃リスクが常に存在します。
しかし、アンテナの工夫によってこれらの脅威を大幅に軽減できることをご存知でしょうか?
本記事では、GNSSアンテナを活用したジャミング対策について解説します。
ジャミングとは?GNSSの弱点を突く攻撃
GNSS信号は、地上に届くころには非常に微弱になっています。
ジャマー(妨害装置)は、この弱さを利用して、正規のGNSS信号よりも強力な電波を送りつけ、通信を妨害します。
ジャミングには大きく分けて2種類あります:
- 帯域外ジャミング(Out-of-Band Jamming)
- GNSS帯域に隣接する周波数帯で、強力な信号を送信し、干渉を発生させます。
- 対策方法:
**アクティブアンテナに内蔵されたフィルタリング機能(SAWフィルタ、セラミックフィルタ)**によって大幅に低減可能。
- 帯域内ジャミング(In-Band Jamming)
- GNSS帯域そのものに干渉信号を直接送信します。
- 対策が難しく、一般的なフィルタリングでは防ぎきれません。
- 対策方法:
CRPA(Controlled Reception Pattern Antenna:制御受信パターンアンテナ)システムを使用し、干渉波を空間的に無効化(Nulling)します。
CRPA(制御受信パターンアンテナ)とは?
CRPAは、複数のアンテナ素子を組み合わせたシステムで、
- 干渉波の方向を特定し、
- その方向からの信号を「打ち消す」ことで、
- 正規のGNSS信号だけを受信可能にする技術です。
CRPAシステムでは、攻撃の規模に応じて4素子、8素子、16素子構成などが選ばれます。
素子数が多いほど、複数のジャミング信号を同時に無効化でき、耐性が向上します。
「数の力」で守る:マルチバンド・マルチコンステレーション対応
さらに、単一のGNSSに頼るのではなく、複数コンステレーション+複数バンドに対応することも有効な防御策です。
現在、運用中の主要コンステレーションは以下の通りです:
- 🇺🇸 GPS(米国)
- 🇪🇺 GALILEO(欧州宇宙機関:ESA、民間運用)
- 🇨🇳 BeiDou(BDS)(中国)
- 🇯🇵 QZSS(準天頂衛星システム)(日本・アジアオセアニア向け)
- 🇮🇳 NavIC(IRNSS)(インド地域向け)
それぞれ、複数の周波数(例:L1、L2、L5、E5a、E5b、L6 など)を使用しています。
このバンド・コンステレーションの多様性により、
- イオン層遅延の影響を低減したり、
- プライマリ信号がジャミングされた場合でもバックアップ信号に切り替えることが可能になります。
CRPA + マルチバンド受信のコンビネーションが最強
高性能なシステムでは、
- マルチバンドGNSS受信機を採用し、
- 各バンドごとに独立してジャミング波を無効化(Nulling)できる機能を持たせています。
例えば、GPS L1帯へのジャミングとGLONASS G1帯へのジャミングを同時に排除できるシステムも存在します。
これにより、プライマリとセカンダリ両方のGNSS信号を狙った複合的な攻撃にも耐性を持つことが可能です。
CRPA設計は高度な技術が必要
CRPAシステムの設計は非常に複雑ですが、Taoglasでは、
- CRPA向け組込用アンテナ素子
- GNSSアンテナ設計サポート
を通じて、お客様の高耐性GNSSシステム開発を支援しています。
まとめ:GNSSアンテナ選びが防衛力を左右する
攻撃手段 | 防御策 |
帯域外ジャミング | アクティブアンテナ+フィルタリング |
帯域内ジャミング | CRPAシステムによるNulling |
信号喪失 | マルチバンド・マルチコンステレーション対応 |
GPSに依存する現代社会において、ジャミング対策はもはや必須です。
早期に最適なアンテナ設計を行うことが、製品の信頼性と安全性を高める最大の近道となります。
Taoglasでは、GNSS耐ジャミング設計に最適なソリューションをご提供しています。
- CRPA向け組込アンテナ素子ラインナップ
- マルチバンド・マルチコンステレーション対応製品
- 設計・シミュレーション・テストまでトータルサポート
詳細資料や技術相談をご希望の方は、ぜひTaoglasまでお問い合わせください!