すべてのエンジニアが一度は直面したことがあるでしょう。高性能なGNSS受信機と認証済みアンテナを選んだはずなのに、フィールドテストでデバイスがうまく動作しない。なぜでしょうか?
問題は個々の部品ではなく、それらが**“システムとしてどのように連携しているか”**にあります。個々のコンポーネントが優れていても、システム全体で設計が最適化されていなければ、性能は発揮されません。
たとえば、アセット(資産)トラッカーがセルラー通信に失敗したり、**TTFF(Time-To-First-Fix)**が極端に長くなるようなケース。まず最初に疑うべきは信号チェーンです(アンテナ → フロントエンドフィルター → LNA → 受信機)。この信号チェーンがシステム全体のRF性能を左右するからです。
システム全体で最適設計されていない場合、以下のような問題が起きやすくなります:
- Band 13による干渉:LTEモデムからのノイズでGNSS受信機が感度低下
- セルフジャミング:Bluetooth、セルラー、Wi-Fiなどの無線が互いに干渉
- 低効率:優れたアンテナも、損失の多い伝送ラインや金属とのクリアランス不足、グラウンドプレーン不足などにより性能が大幅に低下
回避策:まずは設計段階から始める
こうしたパフォーマンス低下を回避するには、以下の3つの観点で設計することが重要です:
- システム感度(アンテナ利得、フィルター損失、LNAノイズ指数の関数)と
ダイナミックレンジ(強い干渉源に対する耐性)を理解する - システム全体の観点で干渉源を突き止める
- 問題が起きる前に、設計段階で干渉の影響を排除する
システムレベルの調査
まずはスペクトラムアナライザーを使ってシステムチェックを行います。ただ干渉信号を探すのではなく、**“干渉を発生させている部品は何か?”**に着目します。電源?プロセッサ?フラッシュメモリのスルーレート?他の無線機器?
次に相関検出を使って干渉を特定します。たとえば、アセットトラッカーのLTEモデムを強制的にBand 13で送信させてみて、GNSS性能が落ちた場合、それはシステム全体でのネガティブな相互作用が存在している証拠です。典型的な「サブシステム同士の干渉」パターンです。
干渉の“良き隣人化”とその方法
干渉源が特定できたら、それを他の機能の「良き隣人」に変えるフェーズです。対策方法としては以下があります:
- 出力側にフィルタを追加:LTEモデムのTXラインにフィルタを設置
- アンテナの前段にSAWフィルタを追加:LNA前にBand 13除去用のフィルターを入れる
- 空間的/時間的な分離:干渉を発生させる無線とGNSS系統を物理的に分離する
アンテナ統合の工夫が干渉を防ぐ鍵に
干渉対策としては、以下3つのポイントを押さえた慎重なアンテナ統合が極めて有効です:
- アンテナ配置とグラウンドプレーン – チップアンテナは正しく統合され、十分な金属クリアランスと正しいグラウンドプレーン配置がなければ、その性能は著しく低下します。効率が悪くなればLNAがより多く働かざるを得ず、システム全体が干渉に弱くなります。
➡︎ アンテナ統合ガイドを厳密に守ることが重要です。 - エンクロージャとキープアウトエリア – パッチアンテナにプラスチックエンクロージャが近すぎると、アンテナが**デチューン(共振ずれ)**してゲインが低下し、干渉に拍車がかかります。
- 伝送ライン損失 – 不適切なトレース設計は信号減衰を引き起こし、干渉の影響を助長します。
➡︎ 目安として、伝送ラインの損失が1 dB減ると、システムのノイズ指数も1 dB改善されます。
最後の砦:フィルタ内蔵アンテナ
統合設計を最適化してもまだ干渉が残る場合は、フィルタ内蔵アンテナが効果的です。この戦略では、システム全体の問題を1つのパーツで解決します。
アセットトラッカーの例では、Band 13のノッチフィルターを統合したGNSSアンテナを選ぶことで、受信機の入り口で不要な信号を除去し、LNAが感度を失うのを防ぐことができます。
結論:偶然ではなく、設計によって堅牢なデバイスを構築する
ラボやフィールドテストでデバイスが不調に陥ったとき、それは「干渉対策を後回しにしてはいけない」という警鐘です。干渉対策は設計の最初の段階で行うべき原則です。開発終盤で反応的に対処していては、コストと開発期間が膨れ上がります。
システムレベルの計画から始め、アンテナ統合を徹底し、予測される問題にはフィルタ内蔵アンテナなどの専用部品で対応する。そうすることで、最初から堅牢な製品を作ることが可能になります。
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