MIMO(Multiple Input Multiple Output)アンテナシステムは4G・5G・Wi-Fiの通信性能と信頼性を飛躍的に向上させます。そのため、多くのデバイスメーカーは価格競争ではなく通信パフォーマンスで製品差別化を図る手段としてMIMOを活用しています。特に重要インフラ、救急通信、ミッションクリティカルなIoT用途などにおいてMIMOは欠かせません。
MIMOの進化:シングルアンテナから複数アンテナへ
初期の2Gや3G端末では、**SISO(Single Input Single Output)**構成が一般的でした。つまり、1つのアンテナで送受信を兼ねていました。
その後、3Gの進化とともに受信用アンテナが追加され、通信の信頼性とスループットが改善。
さらに、4GではMISO(Multiple Input Single Output)構成へと進化し、現在の5GではMIMO構成が標準化されています。
MIMO構成 |
説明 |
2×2 MIMO |
送信2本 × 受信2本のアンテナ構成 |
4×4 MIMO |
送受信それぞれ4本ずつの高次構成 |
アンテナ本数が増えるほど、干渉耐性や高速通信の実現が可能になります。
MIMO導入時に考慮すべき3つのポイント
通信モジュールの対応数
- 例えば、デバイスのモジュールが2×2 MIMO対応であれば、それ以上のMIMOアンテナを選んでも性能は発揮できません。
使用する周波数帯(Band)
- 対応するMIMO構成は帯域によって異なるため、製品が使う予定のバンドとの整合性を確認することが重要です。
通信キャリアの認証要件
- 例:AT&Tは5G NR FR1において、4×4 MIMOを必須要件としています(単一アンテナ構成は非許可)。
- 各キャリアごとに**TRP(総放射電力)やTIS(総等方感度)**の基準を設けており、それらを満たす必要があります。
→ 詳しくは「キャリア認証前の事前対策とは」をご覧ください。
MIMOアンテナ統合を成功させるポイント
アイソレーションの確保(Isolation)
- アイソレーションとは、アンテナ同士の信号干渉の少なさを示します。
- アンテナ同士の干渉を防ぐことで、マルチパス信号を効率的に受信できます。
空間ダイバーシティ(Spatial Diversity)
- アンテナ同士が異なる位置・方向に配置されることで、さまざまな方向からの信号を受信可能。
- 例:スマートフォンでは、主アンテナを下部に、ダイバーシティアンテナを上部に設置(約90度の配置差)。
設計初期からアンテナ統合を考慮する
- デバイスの筐体設計や基板レイアウトが確定後では、最適なMIMOアンテナの配置が難しくなります。
- 結果として、高額な再設計やカスタムアンテナの開発が必要になるリスクもあります。
→ 詳しくは「アンテナ空間ダイバーシティとデバイス性能への影響」をご覧ください。
まとめ:MIMO導入で性能差別化を実現するには?
成功のカギ |
解説 |
高次MIMO構成(例:4×4) |
5G対応、高速・高信頼性用途に最適 |
早期設計への組み込み |
製品設計初期からアンテナを考慮 |
キャリア基準対応 |
TRP/TIS要件を満たす構成選択 |
空間分離・指向性制御 |
干渉を最小化し、多方向からの受信力を最大化 |