不動産業界では、都市の景観が楽しめる好立地の物件には高値が付きます。警察車両や救急車などの緊急車両にとって、その「好立地」とは車両のルーフ(屋根)です。
車両のルーフはセルラー、GNSS、Wi-Fiなどのアンテナを設置するのに理想的な場所です。金属製の屋根面はアンテナのグラウンドプレーンとして機能し、その面積やアンテナの配置位置が直接的に利得(ゲイン)に影響します。利得とは、アンテナが送受信する信号の強さに関連する指向性を示す指標です。(利得などの基本概念については、「セルラーおよびGNSSデバイスにおけるグラウンドプレーンの理解」をご覧ください。)
救急車や警察のSUVなどのルーフは一見、複数のアンテナを配置するのに十分な広さがあるように見えるかもしれませんが、実際にはそう簡単ではありません。たとえば、北米で広く使用されている「Ford Police Interceptor(フォード・ポリス・インターセプター)」は、屋根パネルに12本ものリブ(隆起部)があり、セルラーやGNSSなどのアンテナを設置するスペースを見つけるのが困難です。さらに、ライトバーからのRFI(無線周波数干渉)を避けるために、アンテナをその半波長分以上離して設置することが推奨されます。
このような課題のため、公安向け通信の専門業者(アップフィッター)らは、1台の車両あたり3~4時間をかけて、複数のルーフ位置に穴を開け、それぞれのアンテナへケーブルを通しています。顧客が数十台または数百台の車両を所有している場合、その設置作業時間は膨大なものになります。
そして、これは設置対象の車両に求められる技術的要件・性能・形状すべてを満たすアンテナモデルが見つかった場合の話です。各アンテナ筐体は、湿気や水の侵入によるケーブル、コネクタ、アンテナ素子の損傷を防ぐため、屋根に密着している必要があります。これは“ミッションクリティカル”な通信インフラなのです。
ブロードバンド、ナビゲーション、テレメトリ、音声通信向けの18素子アンテナをコンパクトな筐体に集約
これらの課題に対応するため、Taoglasはこのたび「Patriot(パトリオット)」シリーズをリリースしました。このシリーズは、緊急車両向けに設計されたコンパクトな多機能ルーフマウントアンテナです。サイズはわずか205mm(長さ)×180mm(幅)で、1つの筐体に最大18個のアンテナ素子を内蔵できます:
- 4Gおよび5Gセルラー(FirstNetを含む、600〜6000MHz)
- デュアルバンドGNSS(L1およびL1/L5)、およびセカンダリGNSS(L1)
- Wi-Fi(2.4GHz / 5.8GHz / 7.1GHz)
- SDARS(2.3GHz)
- LMR/TETRA(380–400MHz および 700–900MHz)
また、P25 VHF/UHF/700–900MHz帯をフルサポートする専用のホイップアンテナも用意されています。ホイップの長さは、周波数帯に応じて60〜164mmの間で変化します。
たとえばFord Interceptorの場合、既存のOEMシャークフィンアンテナを取り外し、Patriotに交換するだけで設置が完了します。これにより、新たな穴を開ける必要が最小限またはゼロになります。Patriotシリーズには、湾曲した車両ルーフに対しても完全に密着するよう、専用設計のフォームガスケットが付属しています。
設置時間を1時間未満に短縮し、退役後の車両売却コストも削減
Patriotは、車両1台あたりの設置時間を1時間未満に短縮するだけでなく、長期的なコスト削減にも貢献します。緊急車両が退役した際、再販に向けて多数のルーフ穴を補修する必要がなくなるからです。予算が常に厳しい公共安全分野において、コスト削減は大きなメリットです。
Patriotアンテナは、現在GetWireless経由で事前注文が可能です。