アセット(資産)トラッカー、ペット用トラッカー、フィットネス用ウェアラブル、サイクリングコンピューター、そしてスマートフォン。これらに共通することは何でしょうか?ひとつは、すべてが位置測位とナビゲーションにGNSSを使用していること。そしてもうひとつは、バッテリーが切れてしまえばGNSSが使えないということです。
このように、デバイスメーカーは位置情報の精度を保ちつつ、バッテリー寿命も延ばさなければならないという課題に直面しています。その解決策のひとつがデューティサイクルです。GNSS受信機を常に動作させるのではなく、アプリケーションの要件に応じて特定の間隔でのみ電源を入れるという技術です。
たとえば、輸送用コンテナに取り付けるアセットトラッカーでは、GNSS受信機を1時間に1回だけオンにする設定ができます。一方で、フィットネス用ウェアラブルでは10秒ごとにオンになるかもしれません。
加速度センサーを搭載したデバイスなら、さらに賢い方法もあります。インテリジェント・デューティサイクルというもので、一定以上の動きが検出された場合のみGNSS受信機を起動します。これは、猫のように1日12〜16時間もじっとしている動物用のペットトラッカーに適しています。
A-GNSS(Assisted GNSS)という選択肢
A-GNSSはもうひとつの選択肢です。セルラーデータを少しだけ使って現在の衛星のアルマナック情報およびエフェメリス情報をダウンロードすることで、「ホットスタート」が可能になります。これにより、**ファーストフィックスまでの時間(TTFF)**が約30秒から1〜2秒に短縮されます。結果として、より短時間で省電力な位置測位が可能になります。
GNSSアンテナの選定と統合で省電力を実現するには?
高性能なGNSSアンテナは、バッテリー寿命と測位のきめ細かさを両立させる最も効果的な方法といえます。実際、GNSSアンテナはデューティサイクルやA-GNSSと補完的な関係にあり、受信機がオンになったときに高品質な信号を確実にキャッチできるようにします。つまり、GNSS受信機が無理に性能を引き出そうとしなくても良くなり、そのぶん消費電力も削減できるのです。
ただし、アンテナによってその効果には差があります。選定時に最も注目すべき3つの仕様は次のとおりです:
- 効率(Efficiency) – 受信電力の多くを無駄なく届けられる効率の高いアンテナなら、GNSS受信機の**低雑音増幅器(LNA)**が必要とする利得が少なくて済みます。つまり、そのぶん消費電力を抑えられます。
- システムノイズ指数(System Noise Figure) – アンテナ+フィルター+LNAで構成されるフロントエンドが低ノイズで設計されていれば、**SNR(信号対雑音比)**が向上します。SNRが高ければ、信号が弱い環境でも高出力を使わずに安定した動作が可能になります。
- 干渉除去性能(Interference Rejection) – デバイス内またはその近くにあるセルラー送受信機からの干渉により、GNSS受信機は本来必要のない電力を使って信号を解析しなければならなくなります。アンテナモジュールにフィルターを統合することで、こうした不要な電力消費を抑制できます。
省電力なGNSSチップセットとクラウドオフロード
すべてのGNSS受信機が同じというわけではありません。近年のチップセットの多くは、超低電力モードを必要とするIoT用途向けに設計されています:
- 取得電流 vs. 追尾電流 – 最も電力を消費するのは、衛星信号の取得(acquisition)フェーズです。取得時と追尾時(tracking)の両方で電流値が低いチップセットを選びましょう。
- 省電力モード(Power Save Modes) – 最近のICでは、受信機全体の電源を落としつつ、発振器だけを温めておくトリクルパワー(trickle power)モードが利用できます。これにより、次回の起動時のTTFFを大幅に短縮できます。
さらに、クラウド/エッジコンピューティングも有効です。GNSS位置データの処理をクラウド側にオフロードすることで、デバイス本体の消費電力を減らせます。デバイスは**擬似距離(pseudoranges)**などのローデータのみを収集して、少量のデータパケットとしてクラウドに送信し、そこで位置演算を行います。
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