ゲイン(Gain)は、セルラー、Wi-Fi®、GNSS(全球測位衛星システム)を含むあらゆる種類のアンテナを評価する上で最も重要な指標の1つです。
なぜなら、ゲインはデバイスの性能と信頼性、さらにその上で動作するすべてのサービスに直接影響を与えるからです。
結果として、アンテナのゲインは製品の競争力、収益性、ブランド評価にも関わります。これは、コンシューマー向けであっても、企業向けであっても、モバイル用途でも固定用途でも変わりません。
アンテナゲインとは?
ゲインとは、アンテナが信号を送信または受信する際の指向性と信号強度との関係を測定する指標です。
たとえば、GNSSアンテナのゲインは、GNSS信号の品質に直接影響します。ゲインが高ければ、信号対雑音比(SNR)が向上し、初期測位時間(TTFF)が短縮されます。
ゲインは受信、送信、またはその両方に使用されるアンテナに適用されます:
- 受信時:アンテナの役割は、受信機が処理できる限り多くの信号を供給することです。距離やビル、樹木などの物理的障害物によって弱くなった信号を、より効果的に受信できれば、受信機はそれを補うためのパワーを使う必要がなくなり、バッテリー寿命が向上します。ゲインは、この受信効率をdB(デシベル)で数値化したものです。
- 送信時:ゲインは、送信機からの電気エネルギーをどれだけ効果的に電波に変換できるかを測定します。こちらもdBで表現されます。
アンテナの分類:高ゲイン vs 低ゲイン
ゲインは、アンテナの分類にも使われます:
- 高ゲインアンテナ:
指向性があり、特定の方向に集中して信号を送受信します。
例:空に向けて設置されたGNSSアンテナ。
高ゲインアンテナはしばしば“アクティブアンテナ”と呼ばれ、LNA(低雑音増幅器)を用いて信号を増幅します。これは、GNSS信号のように地球到達時に非常に弱くなっている電波を必要とする高精度な測位アプリケーションに有効です。
なお、LNAを使用しなくても、アンテナ設計だけで高ゲインを実現するパッシブアンテナも存在します。 - 低ゲインアンテナ:
全方向性(オムニディレクショナル)で、360度あらゆる方向からの信号の送受信に適しています。
例:スマートフォンやIoTデバイスに使われるセルラーアンテナ。
ゲインが高すぎると問題になる?
次に考慮すべきなのがピークゲインです。
一部の地域では、特定の無線技術に対してピークゲインの上限が規定されています。
たとえば、アメリカのFCC(連邦通信委員会)は、Bluetooth®、セルラー、Wi-Fi®のゲインを制限しています。これは、隣接する帯域で動作する民間・軍用・研究サービスへの干渉を防ぐためです。
この点からわかるように:
- 高ゲイン=常に良いとは限らない
アンテナ選定では、ゲインだけでなく、効率性、ERP(実効輻射電力)、EIRP(等方輻射電力)などの規制との適合性も考慮すべきです。 - 新技術はゲイン制限に影響を与える
5Gでは、既存サービスと帯域を共有するため、ピークゲイン制限が追加されています。今後6Gではさらに未使用の帯域に進出するため、規制はより複雑になる見込みです。 - モジュールメーカーもゲイン制限を指定
特に組み込み型アンテナでは、基板のGNDプレーン、周辺部品、筐体の影響なども含めて総合的に評価する必要があります。
こうした複雑な要件に対応するために、多くのOEMがTaoglasのエンジニアリングサービスに相談しています。
設計でゲインを最大化する方法
アンテナのゲインには、デバイスの設計、形状、設置環境などさまざまな要因が影響します。
たとえば:
- 組み込みアンテナを使用する場合、PCBがGNDプレーンとして機能します。
このGNDプレーンは、据え置き型TVアンテナにおける「地面」に相当する役割を持ち、そのサイズとアンテナの配置がゲインに直接影響します。 - 車両のルーフやトランク上に設置された外付けアンテナの場合、車両の金属表面がGNDプレーンとなります。特にGNSS用途では、弱い衛星信号を補うためにGNDプレーンの大きさとアンテナ位置が重要です。
アンテナ検討は製品設計の初期段階で
アンテナの設計や統合は、製品設計の初期段階で検討することが重要です。
たとえば、組み込みアンテナを最終段階で選定しようとすると、GNDプレーンが物理的に小さすぎるなどの問題が発生する可能性があります。
その結果:
- 高コストな再設計が必要になる
- 開発スケジュールが遅延し、市場投入が遅れる
- プロジェクト全体のROIに影響が出る
ゲインで優位性を得るには?
アンテナゲインを最大限に活用し、製品の性能と市場競争力を高めたい場合は、Taoglasのエンジニアリングチームにぜひご相談ください。
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