アンテナのグランドプレーン(接地面)は、セルラーおよびGNSS(全地球測位システム)デバイスにとって極めて重要な要素です。これは、デバイス本体だけでなく、その上で動作するすべてのアプリケーションの性能と信頼性に大きく影響します。つまり、最終的にはユーザー体験とビジネス収益にも直結するということです。
たとえば、スマートフォン、ウェアラブル、IoTセンサーなどのモバイルデバイスでは、グランドプレーンは、固定アンテナが持つ物理的なアースの電気的代替として機能します。グランドプレーンの仕組みを理解するためには、まず「ゲイン(利得)」という概念を押さえることが役立ちます。これは、アンテナが送受信する信号の強度に関連する指向性の指標です。
たとえば、高ゲインのGNSSアンテナは、受信機に届く信号品質を向上させるため、位置特定までの時間(TTFF)を短縮できます(詳細は「アンテナゲインの理解とパフォーマンス・信頼性への影響」をご覧ください)。
外付け vs. 内蔵アンテナにおけるグランドプレーンの考慮点
アンテナゲインに影響を与える主要な要素のひとつが、デバイス設計です。ここでグランドプレーンの重要性が発揮されます。
たとえば、内蔵アンテナを採用するデバイスでは、プリント基板(PCB)がグランドプレーンとして機能します。このとき、PCBのサイズやアンテナの配置場所がゲインに大きな影響を与えます。
主な設計要素:
- グランドプレーンの長さ
→ アンテナ性能に最も影響する要因
→ 推奨:自由空間波長の1/4 - キープアウト領域(アンテナ周囲の空間確保)
- 金属部品との距離
モジュール(送信機/受信機)とアンテナの相互作用を全体として理解することが重要です。モジュールメーカーは、アンテナに許容されるピークゲインの上限を定めています。内蔵アンテナの場合、グランドプレーンだけでなく、周辺部品や筐体設計もゲインに影響を与えます。
外付けアンテナの設置とグランドプレーンの関係
外付けアンテナの場合、設置場所が鍵となります。たとえば、自動車用途ではアンテナを車両の屋根やトランクに設置することが多く、これらの金属面がグランドプレーンとして機能します。
このように、外付けアンテナを選ぶ際は、デバイスがグランドプレーンを確保できるかどうかが、設計上の重要な判断材料になります。
たとえば、ドローンにGNSSアンテナを設置する場合、筐体がプラスチック製であることから、十分なグランドプレーンが確保できないケースがあります。このような場合に適しているのが、全方位に均等なゲインを持つクワッドヘリックスアンテナです。例としては、内蔵タイプのTaoglas EAHP.125、外付けタイプのTaoglas Accuraシリーズ TS.125.0111Wがあります。
一方、グランドプレーンの確保が常に保証される用途では、パッチアンテナや交差型ダイポールアンテナ(GNSS)、ターミナルマウント型モノポールアンテナ(セルラー)が適しています。
通信キャリアの認証要件
セルラーアンテナにおいて、グランドプレーンはキャリア認証取得の成否に大きく関わります。各モバイル通信事業者は、自社が使用する周波数帯に対して、**アンテナ効率(TRP/TIS)**の最低基準を定めています。
内蔵アンテナの場合、グランドプレーンのサイズが不十分だと、効率要件を満たせず、その通信事業者のネットワークでの使用が認証されません。
一部の外付けアンテナはグランドプレーン不要であり、ケーブルが20cmを超える場合はキャリア認証が不要になることもあります(詳細は「セルラー機器の事前認証が重要な理由と成功するためのポイント」をご覧ください)。
また、使用する通信規格によっても認証基準が異なります。たとえばLTE規格では、Cat 1、Cat 1 bis、Cat M1など、カテゴリごとに効率基準が異なります。デバイスサイズによっても変動します。たとえば、AT&Tは、Cat M1デバイスが最長方向107mm未満の場合、特定のTIS/TRP要件を設定しています。
Taoglasは設計段階から支援可能です
こうした複雑な技術要件や設計上の検討事項に対して、Taoglasは豊富な知見と実績を活かし、製品設計の初期段階からサポートを提供します。
アンテナ統合についての詳細や技術的なご相談は、以下のボタンよりTaoglasのエンジニアリングチームまでお気軽にお問い合わせください。