約25年前、GSM、CDMA、TDMA、UMTSといった複数の通信規格が存在していたため、世界中で共通に販売できる単一SKU(Stock Keeping Unit)のセルラーデバイスを構築するのは非常に困難でコストもかかりました。
しかし4GでLTEが標準化され、マルチバンド・マルチモードのチップセットやアンテナが急速に普及したことで、グローバルSKUデバイスの実現が現実のものとなりました。
これにより、OEM企業やシステムインテグレーターは、以下のようなIoT製品を世界市場向けに設計・提供できるようになりました:
- 世界中で利用可能な資産追跡デバイス(トラッカー)
- 石油・ガス業界の遠隔井戸やパイプラインに展開される産業用センサーやコントローラー
- 医療機器プロバイダーが大陸規模で展開可能なホームヘルスモニター
- 各国のユーティリティ企業が導入できるスマートグリッドおよびスマートメーター
グローバルSKU製品は、販売側と使用側の双方にとって、デバイス管理、SLA、物流、トレーニング、保守、保証業務などを大幅に簡素化できる利点があります。
マルチモード・マルチバンド対応のチップセットとアンテナ
たとえばQualcomm 9205は、グローバルSKUデバイスに理想的なマルチバンド・マルチモードチップセットの一例です。450MHz〜2.1GHzの23以上のバンドに対応しており、スマートグリッドや産業向けの**LTE 450(プライベートLTE)**のような特殊用途にも対応可能です。
また、3GPP Release 14のLTE Cat M1およびNB-IoTにも対応しており、低消費電力かつグローバル展開が必要なウェアラブルやペットトラッカーといったIoTデバイスに最適です(詳細は「IoT用途に適したLTE規格の選び方」をご覧ください)。
グローバル通信に必要なSIMの要件
SIMカードもまた、グローバルSKUを実現する上で重要な要素です。スマートフォンと同様に、IoTデバイスが国境を越えてローミングできる必要があります。
たとえば、輸送用コンテナに取り付けられたトラッカーがアジアからアメリカまで、鉄道、船、トラックで移動する場合、長期間・複数国で利用可能なSIMが必要になります。これは単なるローミングとは異なり、グローバル対応SIM戦略が求められます。
その一例がTelit CinterionのNExTプラットフォームです。これはeSIMと**MVNO(仮想移動体通信事業者)**サービスを組み合わせたもので、200カ国以上、600以上のモバイルネットワークでデバイスの接続を可能にします。
統合設計と認証取得が成功のカギ
グローバルSKUデバイスを成功に導くには、モジュール、アンテナ、PCB、筐体などを最適に統合することが不可欠です。
この統合プロセスでは、キープアウト領域、グランドプレーン、材料の選定など、性能と信頼性を左右する重要な設計要素を最適化します。
さらに、FCCなどの各国の規制要件や、モバイル通信事業者ごとのネットワーク接続要件を満たす必要があります。これには、信号強度、データスループット、音声品質、アンテナ性能、RF安全性、ネットワーク互換性などのテストが含まれます。
Taoglasが提供する統合支援と認証支援サービス
こうした統合設計や認証プロセスは、OEMやシステムインテグレーターにとって高コストかつ高度な専門性を要する作業です。
たとえば、プリ認証テストには**無響室とベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)**が必要です。多くの企業はこのような専門設備を持っていないため、Taoglasのエンジニアリングサービスを活用して、設計段階から認証取得までワンストップで支援を受けています。
グローバルSKU対応のセルラーデバイス設計についてのご相談は、以下のボタンよりTaoglasのエンジニアまでお気軽にお問い合わせください。